突然ですが、漢方薬と民間薬の違いってご存じでしょうか?どちらも薬であることには変わりないのですが。
漢方薬は中医学を参考にして日本独自に発展した医学を元に単味または数種類の生薬を組み合わせた薬のこと。民間薬は地域などで古くから使われてきた経験を元に基本的に単味で使用されてきた薬のこと。日本三大民間薬は”ドクダミ”、”センブリ”、”ゲンノショウコ”と言われています。他にも多くの民間薬が存在していますが、漢方薬が簡単に手に入るようになり、民間薬の存在は次第に薄れてきているように感じます。
今回は、最近のお問い合わせで勉強になったことをお伝えします。
あるお客様との会話の内容を大先生に伝えると、「WTTCの構成によく似ている。」と。
ーーーーこの”WTTC”っていったい何なんだろう?と疑問に思ったことが今回の勉強の始まりです。
💊WTTCとは?
4種類の植物(民間薬)を組み合わせた処方で、W(フジコブ)T(カシ)T(ヒシノミ)C(ヨクイニン)の学名の頭文字をとった製品。各10~15gを煎じて服用する薬です。現在は2社から発売。
昭和30年代に千葉大学医学部外科の中山恒明教授が、がん患者に使用したことで注目されるようになった薬。
💊構成植物
・フジコブ(藤瘤)
藤の木に出来た瘤、成分中のイソフラボノイドなどに抗がん作用があると報告されている。
・カシ(訶子) 別名:ミロバラン、訶梨勒(カリロク)

収斂・鎮痙作用があり咳や声がれに使用される。抗菌・抗ウイルス作用がある。慢性下痢にも使用している。響声破笛丸料に用いられている。
・ヒシノミ(菱の実) 別名:菱実(リョウジツ)

胃腸の働きを助け、解毒や強壮作用がある。ミネラルやビタミンが豊富で抗酸化作用や免疫力のサポートにも役立つ。最近TV番組で菱の実茶が取り上げられた。抗がん作用があると報告されている。
・ヨクイニン(薏苡仁) 別名ハトムギ

利尿、排膿、清熱作用があり、いぼ取りによく使用される。整肌により化粧品に使用される。抗がん作用の報告がある。薏苡仁湯や桂枝茯苓丸加薏苡仁などに用いられている。
💊WTTCと中山教授
胃がん根治手術不能で余命数カ月の患者さんが1年半後の再診で元気にしていた様子に、千葉大学医学部外科の中山恒明教授が訪ねたところ、退院後に知人から紹介されて服用していた薬があった。その薬の一部を同様の難治性がんの患者さんに効果を検討したことが始まり。これは昭和30年代ごろの話なので、今から60年~70年前の出来事。
元々は胃腸薬として処方されていたそうで、WTTCは4種類ですが実際は更に何種類か組み合わせていた記録を見つけましたが、どんな構成だったのかまでは分かりませんでした。
当時の食道がんの世界的権威であった中山教授が検討し有効性を確認したという事実は驚きとともに漢方薬や民間薬を見直す一助になったと思っています。
💊現代のWTTCは?
ホミノ漢方「コイクシン」、長倉製薬「W.T.T.C粒状」があります。「コイクシン」にはWTTCにタクシャが加味されています。
・添付文書・
ホミノ漢方「コイクシン」 →https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J0601007509_03_A.pdf
長倉製薬「W.T.T.C.粒状」 →https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINSOTC/J0601011084_A.pdf
現在では、フジコブは貴重な民間薬で入手困難なため、製剤化している商品を服用するか、霊芝やサルノコシカケ、桑寄生を代用する案を見つけました。
イボやポリープに使うことが多く、咽喉・消化器のポリープや子宮頸部異形成などに使用した記録があります。中山教授はがんの延命治療に用いていたので、抗がん作用を期待できる処方だと思います。
【余談】
文献の検索で最近使用している、”国会図書館デジタルコレクション”
サービスを提供している図書館で閲覧したり、利用証があれば自宅で閲覧することもできます。(一部資料は対応していない場合があります。)
情報社会の現代でも、古くからある民間薬の情報を見つけるのは簡単ではありません。しかも、大先生に聞かなければ知らなかった薬です。なかなか手に入りにくい生薬や民間薬も増えてきましたが、せめて知識だけは残しておきたい。その処方をブラッシュアップして、現代の処方を作ることで次の一手になれたらと思っています。
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