最近、久しぶりにイチョウの葉についての問い合わせがありました。日本でも一時話題になった”イチョウの葉”。何となく知っている程度だったので、いい機会なので勉強しました。

・イチョウってどんな植物?

イチョウは最古の植物の1つであり、”生きる化石”とも呼ばれるほど太古から繁茂している生命力の強い植物です。日本では街路樹や神社仏閣でよく見かける馴染みのある植物。原産は中国。特徴的な葉の形から、中国では”アヒル(カモ)の足”を意味する鴨脚樹と呼ばれています。

種子は”銀杏”。鎮咳・去痰作用がありますが、メチルピリドキシンという成分が毒性を持ち、熱に強いため加熱しても毒性は消えません。そのため、食べる量に注意する必要があります。

・これまでの経緯は?

1968年にドイツでイチョウ葉エキス剤が販売され、1980年代には臨床試験結果が報告、有用性が評価されています。日本では1988年に健康食品として販売、1997年にはJAMA(米国医師会が発行する臨床雑誌)にアルツハイマー型・脳血管型認知症に有用と掲載されました。これにより、世界的にイチョウ葉エキスの需要が高まった経緯があります。2008年には再びJAMAに認知症やアルツハイマー病の罹患率に影響は見られないことが報告されました。

しかし、2010年後半頃から機能性表示食品に指定されたり、紆余曲折を経ていますが、無くなったり販売中止になっていないことを考えてみると、全く効果が期待できないというわけでもなさそう。

こういう経緯があってか、イチョウ葉エキスは欧米では医薬品として区分されていますが、現在日本での扱いは”サプリメント”です。

厚労省の見解についてはこちら → https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/25.html

・体にとって良いものなの?

イチョウの葉に含まれる成分で、”フラボノイド”、”テルペノイド”、”ギンコライド”が血液循環や血管強化に働きかけ、抗酸化作用もあります。特に脳血管に与える影響が大きいとされ、記憶力の向上や認知機能を維持する働きが期待されています。

効果もあれば、副作用もある。

頭痛、消化器症状、アレルギー性皮疹の報告がありますが、頻度は低め。脳血流を改善するため、出血を伴う手術や抗凝固薬や抗血栓薬を服用の場合は服用を中止するかまたは対策が必要になります。

また、種子や葉に少量含まれている”ギンコール酸”はアレルギーなどを引き起こす毒性を持つ成分です。製品化している商品はこのギンコール酸の含有量を厳密に規定しており、過剰摂取を防ぐために1日の服用量も決まっています。

・チンキ剤にする理由は?

イチョウの葉の主要成分は脂溶性が高く、アルコールに浸けることで成分が効率的に摂取できます。厳密に言うと”難水溶性”なので、水で溶けないことはないのですが、十分な摂取量にするにはアルコール抽出がオススメです。

特にチンキ剤と言って、生薬やハーブをホワイトリカーなどのアルコール度数の高いお酒に浸けたものは抽出が良く、長期保存に適した剤型です。市販ではドイツ・シュワーべ社の製品が有名です。国内企業はこのドイツの製薬会社が精製したエキスを使って製剤化している商品があるので、気になる方は調べてみてください。

🍹チンキ剤の作り方🍹

・容器に乾燥した生薬・ハーブを5~10倍量の35度以上のアルコールに浸します。

・軽く振って、アルコールを馴染ませます。

・冷暗所に保管し、時々振り混ぜながら2~3週間かけて抽出します。

・生薬・ハーブを茶こしなどで取り除いて保存容器で保管します。

(※使用する部位によって浸出期間が変わります。目安として、葉や花などの柔らかい部位は2~3週間、根などの硬い部位は1カ月以上浸します。)

注意する点は、ギンコール酸の含有量が安定しないこと。自己責任になりますが、極力少量から使い始めることをお勧めします。

・イチョウ葉エキスで使う葉の色は黄色?緑色?

イチョウは秋になると鮮やかな黄色の葉になりますが、これは冬に備えて葉にある栄養を幹に移すために起きている現象。(黄色の色素はカルテノイドの色で、テルペノイド類の1つです。)

この現象から栄養が残っていると考えられる緑色の葉を使う方が良いと思われます。文献を色々と探しましたが、黄色と緑色の葉の成分を比較した資料は見当たりませんでしたが、生薬で使用する見た目も緑色の葉を刻んでいる商品が多いことからも脳血管に与える効果は緑色の方が良いと判断しています。

秋の味覚で楽しみの1つが銀杏。独特な味がお酒のおつまみにぴったり。ここ数年いただく機会があり毎年の楽しみになっています。食べ過ぎに注意しながらこれからも楽しみたいです。

・参考書籍・

体と脳を若々しくする! 万能ハーブ「イチョウ葉」エキス  G・S・ロスフェルド/S・レバート 今村 光一・訳

ココロとカラダに効く ハーブ便利帳  真木 文絵・著 池上 文雄・監修