病院との関りが多かった9月。その影響からか、医療に関した本を手にする機会が多かった気がします。
・処方箋のないクリニック セカンドオピニオン 仙川 環

シリーズ3作目は”セカンドオピニオン”という副題がついています。不眠症、尿管結石、男性更年期障害、卵子凍結、難聴、がん治療の選択。今回は疾患だけでなく、現代に抱える問題にも焦点を当てているので病気だけでなく1話ごとに複数の観点で考えさせられる内容になっていて面白い。身近で同じような状況にある方にも共感できる話の展開なので医療に関わる人だけでなく様々な立場・環境にいる人におすすめできる本です。特に男性更年期については徐々に注目され始めてきている疾患で、これから更に理解が必要になっていくと思われるので必見です。
・ワイルドサイドをほっつき歩け -ハマータウンのおっさんたち- ブレイディみかこ

『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』や『両手にトカレフ』は若者世代に焦点を当てた内容ですが、こちらは”おっさん世代”が中心。著者の居住地である英国の現状を、1章は英国の労働者階級に焦点を当てた著者の身近にいる人たちの英国の政治や環境の中で必死に生き、頑張る姿勢をちょっぴり泣けて、笑える文章は物語のようで感情移入しやすく読みやすい。2章では現在の英国内事情についてかみ砕いて解説されていてとても分かりやすく読みやすい。何かと厄介者にされがちな”おっさん世代”の見方が変わる、見識の広がる1冊です。最近は日本は何かとあわただしい状況、他国のことを知ると自国のことを冷静に客観的に考えられるような気がします。
・まっぷたつの子爵 カルヴィーノ/河島 英昭・訳

身体が善悪に分かれてしまった子爵を甥っ子目線で語られた物語。子爵は分かりやすく2つに分かれましたが、登場人物それぞれが自身の持つ二面性に葛藤する様子、子供ながらに周囲の人を観察し悩む甥っ子の苦悩にも考えさせられることが多くあると思います。話の流れは善悪の対局が目立ちますが、この本には宗教や戦争、ハンセン病(作中では癩病)など時代背景にも注目する要素があります。童話のジャンルですがいろんな面から考えさせられるような作りで面白い1冊。二面性があることで自分を振り返り、律し、時に背を向け、”鈍い完全なもの”として生きることの必然性とはなんだろう。これから何度も読みたくなる本です。
・患者と目を合わせない医者たち 里見 清一

新潮社から発刊されている月間誌『波』9月号に著者と川上未映子さんとの対談が掲載されていて気になった本。医師である著者から見た医療現場や医療制度の問題点を取り上げた内容になっています。ここまで掘り下げてもいいのだろうか、と思うほど赤裸々に語られていて今の医療に疑問を感じている方に読んでみてほしい。ただし、鵜呑みにはせず医療を受ける時は自分自身で考え、判断し、納得のいく方法を選択してほしいと思っています。巻末の『結びに代えて』は保険医療制度についてはとても勉強になりました。医療従事者として働いてきて、実情がわかっているつもりでもいざ言葉にするのは難しい。また医師という立場も世の中に振り回されているのだなと医療従事者として痛切に感じる本でした。
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