11月の読書にテーマをつけるなら『老い』。自分自身が年齢を重ねたことによる不調が分かりやすくなってくると、同じく年を重ねた両親に改めて目を向けたことが影響しているのでしょうか、そんな11月の読書でした。
・介護未満の父に起きたこと ジェーン・スー

”介護未満”という言葉が気になり即購入。新書というと堅い・読みにくいというイメージが付きがちですが、確実に・誰でも訪れる・身近な出来事をテーマに語られた家族とのお話。いずれ向き合う”介護”。日本の医療制度である介護保険を受けるには要支援・要介護の認定が必要で、そこに至るまでのケアは家族に依るところが大きい。少しずつ出来ないことが増えていく現実に、トライアル&エラーを繰り返す。まるでオーダーメイド・ケア!そんなことを赤裸々な体験談として1冊にまとめてくれたのが本書。介護の本は数多あるけれど、その前段階のことは考えたこともなかった。全てのことが同じように解決していくわけではないけれど、起こりうる事の心構えができる指南書にもなっている気がします。まずは地元の公的な介護サービスを知ることから。
・とらわれない生き方 ヤマザキ マリ

先月にヤマザキさんの著作を読み、漫画家ヤマザキマリとしてよりも”人間・ヤマザキマリ”が知りたくてエッセイを探していた時に見つけた本です。人生案内として4つの章に分かれ、Q&Aを交えて特に女性に対してのメッセージが色濃く書かれています。17歳でイタリアに渡り、その後も世界各国で生活をしてきたからこその多角的な視野と柔軟な価値観からできたであろう思考回路。ありきたりな言葉ではなく、体験を通してきたから語りかける言葉にグッと心を掴まされます。テレビや雑誌、ラジオなどでヤマザキさんがゲストだと必ずチェックしています。今度はどんなことを話されるのだろう?
・生きるとか死ぬとか父親とか ジェーン・スー

前述した『介護未満の父に起きたこと』の中で登場し、立ち寄った書店でたまたま著者の特集スペースがあり縁を感じて。20代の若い頃に母を亡くした著者は、母の”母”以外の顔を何も知らずに別れたことを悔やみ、父のこれまでの人生は知っておこうと思ったそう。言われてみれば、”母親・父親”の顔は生まれた時から知っているけれど、それ以前の人生は?”彼女・彼”だった時代は分からない・知らない。時代の変化と共にどんな生き方をしてきたのだろう。
幸いにも私の両親は健在。父に至っては、日数は減ったものの未だに仕事をしている。一緒に仕事をするようになり、ふっと受け取ったものの重さに気が付く。家庭を持ったことで母の有難さと苦労を痛感する。別れの時はいずれ必ずやってくる。それまでに”父母”としてではなく、それぞれ”彼・彼女”という立場で話をしてみたいと、思わせてくれた一冊。
・あなたが僕の父 小野寺 史宣

素朴で心温める物語を描く”ひと”、”まち”、”いえ”はとても好きな作品です。今回は高齢の父と息子のお話。舞台は千葉県館山。こちらも介護とまではならずとも、老いや自分自身の身の振り方を改めて考える40代の葛藤と決断に自分を重ねてしまいそうになります。作中の2人は穏やかな会話をしている様子を浮かべつつ、割りと気の短い私は仕事以外に父と穏やかな会話ができるのか・・・。
お互い確実に年を重ね、年齢ごとの老いも感じてくる。時々腹を立てつつ、同じ仕事をできる幸せも感じながら今できることを長く続けられるように後悔のない選択する。前向きにしてくれた1冊でした。(著者のプロフィールを拝見すると千葉市・真砂の出身。まさかお隣の駅のご出身だったとは。驚き半面ちょっとうれしくなりました。)
最近、老いや介護などに関する本が多い気がします。そういうことを考える年齢になってきたようです。ほうれい線にシミ、夜更かしできない体。気持ちと実年齢に差が出てきたことを痛感している日々です。
M

