今年の花粉症は短期集中型、3月中旬の1週間くらいが辛かったのですが、全体的に軽く終わったなと振り返り。読書にも集中でき、ちょっと嬉しい春を迎えています。
・じい散歩 藤野 千夜

じいさんの散歩物語でほのぼのした話かな、と思っていたらそんなことはない。老老介護に80-50問題も盛り込まれた現代の抱える問題・難題にもしっかり焦点を当てつつ、軽快なテンポでじいさんの生活が描かれている。これは主人公”新平じいさん”によるところ。各章は新平じいさんの”秘密”に絡ませ、現在と回想を行ったり来たりして物語が進んでいきます。このじいさんの凄いところは、問題・難題を抱えても悲壮感を感じさせないところ。カッと笑ってさらりと受け、場合によってはとりあえず流す。介護・お金・不調・家族のこと・・・悩みや焦りは後から湧いてくるけれど、新平じいさんのように”散歩”して心の余裕は持っておきたい。でも、新平じいさんが身内なのもちょっと大変そう・・・と思ったり。
・旅をする木 星野 道夫

アラスカに魅了された写真家であり探検家。1章読むたび、本を閉じてアラスカの余韻が広がるのをゆっくり噛み締めたい。著者のアラスカへの愛情をこちらまで受けてしまう。(地名も場所もわからないのに。)語りかけるような文章だからでしょうか。アラスカという大自然の中で暮らすことは、都市に住んでいると味わえない豊かさや過酷さがあることをこの本で十分に感じ取れます。
この本の題名の『旅をする木』であるトウヒの種子。流れに任せ根付いた場所で動物の憩いの場になり、寿命を迎え土壌の栄養になり、そして次の世代へ・・・どこに根を張るのか、もしくは流れに任せるのか。”誰もがそれぞれの人生の中で旅をしているのでしょう”という著者の言葉。私もそんな”旅”をする人生を歩みたいと思う。
この本を読んだ後、『犬と、走る』本多有香さんの1冊を思い出しました。こちらもぜひ読んでほしい1冊です。
・不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か 米原 万里

ちょっと衝撃的な題名。(答えは読めば納得!)翻訳・通訳の最大の違い・翻訳という仕事・コミュニケーションとしての言葉について、著者の見識と他の翻訳者の実例を挙げながら面白く解説。何気なく海外の通訳を聞いていましたが、裏側にはこんな苦労と努力によって成り立っていたのだとよくよく考えてみると納得。言葉だけ堪能でも、背景は予習しなくちゃ分からない世界ばかり。相当の知識量と忍耐が必要な仕事の1つかと。
そして、母国語の重要性。著者は、母国語以上に外国語の能力は上手くならない。ある程度レベルの母国語だと外国語はそれ以下。母国語を確かに習得してから外国語学習に進むことが、理解力や表現力を豊かにするうえで重要だという見識をしている。そして自分の母国語を持つというのは、個人のアイデンティティーの確立、民族性や文化の担い手が”言葉”であることの証だと。”言葉”を道具に仕事をしてきた著者の考えはとても深く重く感じる。ふっと余計なことを考えて読むと面白さが半減。没頭して読みたい1冊。
・杏のとことこパリ子連れ旅 杏
(※写真を撮り忘れました)
俳優・杏さんのエッセイが2冊同時発売。『杏のパリ細うで繁盛記』は、月刊誌『波』で連載されていてその時に読んでいました。異国の生活の大変さや面白さ、驚きが読みやすく書かれていて、パリ旅行から移住をを決断し実行に至るまでの記録になっています。土地勘があるにしても国外移住、しかも3人のお子さんを連れ。思いついたらエイッとやってしまう杏さんのフットワークの軽さに驚かされました。”人生は旅”という言葉を耳にしますが、旅好きの杏さんにとって、これもまた”旅”の1つなのかもしれないな、と感じています。Youtubeも時々拝見していて2拠点(2カ国)生活を楽しんでいる様子に、異国へ行ってみたくなります。まずはアメリカの友人を訪ねてみようかな。
今月の月刊誌『波』は、表紙が杏さんの絵とフランス国旗。本の解説をヤマザキマリさんがされています。とても嬉しい。

↑2026年4月号 『波』 挿絵がたくさん。可愛らしい。
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