つい最近、漢方薬と食物アレルギーについて友人から相談がありました。まだアレルギーの疑いはないようですが、ママ友の間で話題になったとのこと。友人は昔から漢方薬を好んで使っているため、子供にも使う機会があるかもと気になったそうです。
現在、食物アレルギーに対して表示義務のある項目は以下の通りです。いつの間にかこんなに増えていました。
・必ず表示される8品目・
→えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
・表示が勧められている20品目・
→アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
この食品のほとんどが生薬または薬膳でも取り入れられています。すべては載せられないので今回は一部をご紹介。単味で使うことはほとんどないので、処方名の記載がある食品は覚えておくと良いと思います。
【8品目中】
・くるみ 生薬名:胡桃仁(コトウニン)・・・腎臓機能の補助(腰痛・頻尿)、滋養強壮
・小麦 生薬名:浮小麦(フショウバク)、小麦(ショウバク)
処方名:甘麦大棗湯
・そば 生薬名:蕎麦(キョウバク)・・・血管強化、疲労回復
・卵 生薬名:鶏子黄(ケイシオウ)
処方名:黄連阿膠湯(一部エキス剤はゼラチン使用)
【20品目中】
・いか 生薬名:烏賊骨・・・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎

・オレンジ 生薬名:橙皮(トウヒ)、陳皮(チンピ)
※温州ミカンを使用しますが、一部ビターオレンジ・マンダリンオレンジを使用する場合があるので避けた方がいいと思います。
処方名:香蘇散、茯苓飲、平胃散、二陳湯など(陳皮使用)

・胡麻 生薬名:胡麻(ゴマ)
処方名:消風散

・もも 生薬名:桃仁(トウニン)
処方名:桃核承気湯・桂枝茯苓丸・潤腸湯・折衝飲

・やまいも 生薬名:山薬(サンヤク)
処方名:六味地黄丸・八味地黄丸・牛車腎気丸・啓脾湯・参苓白朮散 など

・大豆 生薬名:香豉(コウシ)、淡豆豉(タントウシ)
処方名:梔子豉湯
・ゼラチン 生薬名:阿膠(アキョウ)・・・阿膠の代替品としてゼラチンを使用
処方名:黄連阿膠湯(コタローエキス剤はゼラチン使用)・芎帰膠艾湯・猪苓湯・杏蘇散・温経湯など
食物アレルギーは年々増加傾向。食事のバリエーションが増え、肉類や乳製品などの動物性たんぱくや脂質の摂取量が増えた頃に比例しているという研究結果が出ています。食事の変化に日本人の身体が追いついていないのかもしれません。
乳幼児期のアレルギー発症は成長して緩解することが多いそうですが、治らずにそのまま症状が続く子や大きくなってから症状が出る子も多くなりました。そして、花粉症の罹患率も年々上昇しています。アレルギー体質が増えたという事でしょうか?
特に共通しているのが便秘がちになっていること。その場合は特に胃腸を整えることも必要です。最近はリーキーガット症候群といって、アレルギーとはまた違う疾患ですが深刻な腸のトラブルをもつ人が増えています。腸内環境を改善してくれる”発酵食品”や腸内のお掃除をしてくれる”食物繊維”を意識した食事を心がけるのが大切です。
今回はアレルギーと漢方について話題にしました。漢方薬に対する医療業界や消費者の意識が変わってきているは、漢方薬局としても有難いことです。今ではOTC医薬品にも漢方処方がよく使われ、CMでも見かけるようになっています。今後も商品化するものは増えていくでしょう。身近になることで嬉しい反面、今回ご紹介した食物アレルギーと漢方薬の関係は、まだまだ十分な周知が出来ていないと感じています。
商品名だとどんな漢方薬なのか、一見分かりにくいのが現状。漢方処方名の併記もされるようになるといいなあと。医薬品は食品でないため、食物アレルギーの表示が義務化されていません。おそらく成分を見ても分からない方が多いと思います。
食物アレルギーをお持ちの方は、トラブルを未然に防ぐためにも購入する時に薬剤師又は登録販売員に相談し下さい。スマホに記録しておくのも便利だと思います。
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