雑談②は6月から9月の小話を。今回は10月から12月までの生薬の小話をまとめました。思いつくまま書いていたら、結構長くなってしまいました。
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・サンマ 10月
薬ではありませんが、秋のサンマは栄養価が高く、薬膳になります。血を補い、気を巡らす効果が期待できます。VB12、鉄分、カルシウム、DHAやEPAなど、血液の組成や流れを良くする成分がしっかり入っています。
焼き魚に大根おろしや生姜を添えるのには、消化促進や殺菌の働きがあるためです。最近はチューブでも売られるようになってきたので、薬味を手軽に取れる様になっています。(”あしらいものと言われる大根おろしは”正確には右下に添えるのが正しい位置のようです。)
・キンモクセイ 10月
生薬名:桂花 けいか
胃腸トラブル・不眠・低血圧など芳香性物質が豊富なので、香りからも効果を得られる植物。 花の白いのは「銀桂」、黄色は「金桂」、赤は「丹桂」。実は花の色が豊富な植物なのです。独特な香りがあり、最近は”オスマンサス”としてハンドクリームや香水に使われ、人気の高い香りのようです。
・ケイトウ 10月
生薬名:鶏冠花 けいかんか
止血作用があり、血尿から不正出血や痔出血まで幅広い出血に対応します。茎や葉、種子も薬用として使われます。似た名前に「ノゲイトウ」という植物がありますが、こちらは青相子と呼ばれ、清熱薬に分類されています。色のついたねこじゃらしのような見た目。
・ねこじゃらし 10月
生薬名:狗尾草 くびそう
狗(いぬ)の尻尾に似た草というのが由来。日本では風に吹かれている様子が猫がじゃれているように見えることから名付けられました。エノコログサともいう。雑穀の粟(アワ)の原種で、熱さまし・利尿作用の効果があります。アワに似ているので、炒ってお湯を注ぐと香ばしいお茶になります。
・銀杏 11月
生薬名:銀杏 ぎんきょう
独特な香りを持つ翡翠色の実。去痰や肺の機能改善、滋養強壮作用があります。食用することができますが、大量摂取は中毒を引き起こします。東京大学に勤務していた平瀬作五郎氏がイチョウに精子があることを発見し、元になったイチョウの木は東京・文京区にある小石川植物園で見ることができます。国内には樹齢1000年を超えるイチョウが現存しています。
近年研究で、イチョウの葉には糖尿病や認知症の効果が見られ、ヨーロッパでは医薬品として使われています。抗酸化作用のフラボノイドや血液循環の改善・血栓を作りにくくするテルペノイド類のギンコライドなど含まれているため、色々な効果が期待できる植物です。
・ニチニチソウ 11月
生薬名:なし
植物に”アルカロイド”といって、毒性を持つ成分を含むものが多いのですが、このアルカロイドが実は薬に応用されていて、ニチニチソウの場合はビンクリスチンが抗がん剤として応用されています。その他の抗がん剤や降圧剤などにも使われています。
度々植物について調べていると、大抵の植物に抗菌作用や抗酸化作用など持っていることが分かります。薬の開発に、植物の成分は欠かせない存在になっています。
・山椒 11月
生薬名:山椒 さんしょう
芳香性・辛味性健胃薬として香りも辛みも胃腸に働きかけてくれます。食用としての需要の高まりを受けて、医薬品用も効果になりました。有名な「大建中湯」の構成生薬の1つ。サンショウは日本原産でミカン科、コショウはインド原産でコショウ科に分類されるので、似たような名前でも大きな違いがあります。
・ツワブキ 12月
民間薬
古くから使われている植物の1つ。切り傷や打ち身、やけどに外用薬として用いることが多く、佃煮の「きゃらぶき」はこの植物で作ることもあるようです。魚の中毒や食あたりに生の汁を飲ませる使い方もあります。
同じキク科フキ属に「蕗」がありますが、見分ける違いは蕗の場合は冬になると地上部がなくなり、初春に見かける「フキノトウ」が出てくるという違いがあります。ツワブキは冬の時期に黄色い花が咲くので分かりやすいです。
身近な植物も生薬や民間薬として使われている物もあったり。見かけるたびに写真に収めているといつの間にか容量がギリギリになっていました。来年はどんな植物に気が付くのか。すでに何件か薬草園を訪ねる予定にしています。
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