朝晩の涼しさを感じられるようになり、ようやく秋を感じます。先日、待ちわびていた秋の薬用植物園見学に参加できました。全国にある薬学部には大抵、薬用植物園が設けられています。大学によっては、期間限定で一般公開をしているところもあります。
今回参加した大学では年2回実施していますが、あまり大々的に宣伝をしていないので、ホームページをこまめにチェックして念願の見学です。

今回参加した植物園では、45~60分の園内観察ツアーが組まれ、薬用植物の蘊蓄を色々仕入れてきました。
・キョウオウ/ガジュツ/ウコン

ショウガ科3兄弟。一見どれも同じ植物に見えますが、よく見て触ってみると違いがよくわかりました。左から、キョウオウ(春ウコン)・ガジュツ(紫ウコン)・ウコン(秋ウコン)です。この3つの見分け方は、花の咲く時期、葉の形状、クルクミンの含有量の違いです。
キョウオウは春に花を咲かせ、クルクミン含有量はウコンよりもやや少なめです。葉の裏側にモフモフとした毛があります。鎮痛・利胆作用を持っています。
ガジュツは夏に花を咲かせ、クルクミンがほぼなく、断面が薄紫色をしていることから”紫ウコン”と名付けられました。葉脈に色がついているのが特徴です。駆瘀血・健胃作用を持っています。恵命我神散という商品に使われています。
ウコンは秋に花を咲かせ、3つの中で一番クルクミン含有量が多いです。別名ターメリックのことで、スパイスとして使われます。葉は両面ツルッとしていました。利胆・健胃・鎮痛作用を持っています。
3種類とも、活血薬に分類されるので血液循環を改善させる働きは共通しています。
・サンシュユ

八味地黄丸や牛車腎気丸の構成生薬の一つである”山茱萸”。この時期に鮮やかな赤い実をつけ始めます。生薬は乾燥させた実を使います。この植物は面白い特徴があり、葉をちぎってみると納豆のように糸を引いています。何かの成分ではなく、葉の構造繊維が伸びて糸のように見えているのです。なぜそういった現象がみられるのかはわかっていないそうです。糸を引く葉は、ミズキ科植物で見られることが多くトチュウやヤマボウシ、ハナミズキでも同じように観察することができます。ちぎってみると弾力があったので、結構伸びそうな感触でした。
・ショウガ

スーパーで売られているショウガも立派な生薬であり薬膳材料です。食用や薬で使うのは、根茎といって根の部分です。今回、たまたま”ショウガの花”の一部を見ることができました。何か所か黄色く生えている部分が花です。ショウガは熱帯地域の植物なので、日本では花が咲く前に気温が下がってしまう季節になるため栽培している農家さんでも滅多にみることができないそうです。白くきれいな花が咲くそうです。案内人の方もまだ見たことがないそうで、見ることが出来たらラッキーだと言っていました。
・漢方処方展示区

植物園の中には、漢方処方ごとに区画を作って、構成生薬の植物を分かりやすく配置しているところがありました。写真の手前は当帰芍薬散で使う生薬が植えてあります。奥に進むと桂枝茯苓丸、安中散、大建中湯、半夏厚朴湯などなど。その中に、『通仙散』(別名:麻沸散)という処方を発見。

『通仙散』は、江戸時代の外科医の華岡青洲が作った麻酔薬です。この麻酔薬で、世界で初めて全身麻酔による乳がんの手術を成功させました。(”華岡青洲の妻” 有吉 佐和子さんの本は一読の価値ありです。)
構成生薬は、チョウセンアサガオ・ソウウズ・ビャクシ・トウキ・センキュウ・テンナンショウです。この中の”チョウセンアサガオ”は、アサガオとついていますが夏に咲く”アサガオ”とは違う植物です。(アサガオはヒルガオ科、チョウセンアサガオはナス科です。)鎮痙・鎮痛・麻酔作用があり、強力な作用を持つため海外では古くから伝統薬として使われていた記録があります。

一見どこにでもありそうな見た目の植物ですが、全草に有毒成分があり、種子や根、蕾が野菜と似ているので誤食による事故が多い植物です。その一方、チョウセンアサガオの成分のアトロピンやスコポラミンは現代の薬に応用されていて、眼科の検査や近視調整、酔い止めなどに使われています。
⚠野草やキノコ類による事故は毎年一定数起きているので、採取し自己判断で食べたり使ったりしないようにしてください。
普段は根や茎など乾燥した状態で見ている生薬の生き生きとした姿を見ることができ、面白い話と共に貴重な体験になりました。まだまだお伝えしたい蘊蓄はたくさん残っています。せっかくなので次回も続きをご紹介します。しばし、お付き合いください。
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